目的:Timed Up-and-Go test(TUG)は短時間で行える歩行・バランス機能の評価ツールで高齢者における転倒ハイリスク者の同定に用いられている.このため,簡易版CGA「Dr.SUPERMAN」の試作に際してTUGを採用した.しかし,TUGを行うには3 mの移動距離が必要なため,限られたスペースでは遂行できない.そこで,Berg balance scaleの一部である起立・バランステスト(以下,SBTと略)を考案し,TUGの代替となりうるかどうかを検討した.
方法:通院中の高齢者105名(年齢64~97歳,平均81.7歳,男51名)を対象としてTUGおよびSBTを施行した.このうち起立困難の6名を除く99名が解析対象となった.TUGは,起立から着席までの遂行時間が14秒以上かかるか動作中に異常所見がみられれば,陽性とし,その他を陰性とした.このTUG所見を本研究のゴールドスタンダードとして,SBT(起立動作や閉脚立位15秒間の体幹動揺性,開眼片脚起立時間)で評価し,異常所見の有無および計測時間のカットオフ値(3秒から8秒までの各秒ごと)の感度,特異度,陽性反応適中率を検討した.
結果:TUG遂行時間は年代順に有意に延長し,陽性者は43名,陰性者は56名あった.一方,開眼片脚起立時間は75歳代より有意に短縮し,1秒に満たない者の多くに体幹動揺性がみられた.TUG所見に対する各条件下のSBT成績で最も識別能が高かったのは「3秒未満もしくは異常所見あり」(感度86%,特異度87.5%,陽性反応適中率84.1%)であった.
結論:通院している高齢患者の歩行・バランス機能の評価ツールとしてTUGが行えない条件下では次善の策としてSBTによる「開眼片脚起立時間3秒未満もしくは異常所見あり」が有用であり,TUGの代替テストとなりうると考えられた.
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