日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
Propylthiouracil内服開始35年後に肺胞出血を呈した1例
若林 規良門脇 徹
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2012 年 49 巻 5 号 p. 612-616

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抄録
症例は69歳,女性.近医で甲状腺機能亢進症に対しpropylthiouracil(PTU)が約35年にわたり処方されていた.2010年1月初旬より咳が出現,2月に入り血痰も生じるようになったため同院受診.胸部X線写真上,両側肺にびまん性すりガラス陰影を認めたため当院紹介入院.気管支鏡検査にて,気管支粘膜は正常で明らかな出血源は認めなかったが,BALで回数を重ねるごとに濃度を増す血性洗浄液を回収したことより肺胞出血と診断した.PTUの中止と短期間のステロイド内服により血痰は消失,肺胞出血は治癒した.入院時に7分と延長していた出血時間もPTU中止により正常化した.以上よりPTU誘発性びまん性肺胞出血と診断した.その後2年間の経過観察でも再燃は認めていない.PTUを使用して数年経過してから肺胞出血を呈することは知られており,その機序として,ANCA関連血管炎が疑われているが確定はしていない.本例は薬剤投与35年経過後に肺胞出血を発症した極めて稀な症例である.多くの疾患を合併した患者を総合的かつ適切に管理する必要がある老年医学の観点からも,注意喚起が必要な教訓的症例と考えられたため報告する.
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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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