日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
尿排泄機能に及ぼす加齢の影響:高齢女性と若年女性の比較
留畑 寿美江
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2012 年 49 巻 6 号 p. 767-774

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抄録

目的:本研究は,尿排泄機能に与える加齢の影響を調べるために,膀胱容量,排尿量,平均尿流率ならびに残尿量を用いて若年女性と高齢女性の自然な排尿状態下における蓄尿および排尿機能を比較した.方法:排尿機能障害のない高齢女性6名(平均年齢64歳)及び若年女性12名(平均年齢22歳)を対象とした.飲水(500~700 ml)後にみられる尿意出現時の膀胱容量,排尿量,尿排出時間,平均尿流率および残尿量を測定した.各項目について,初発尿意時と最大尿意時に分けて実験を2回実施した.膀胱容量を超音波測定機器を用いて非侵襲的に測定した.平均尿流率は排尿量/尿排出時間の式から求めた.残尿量は膀胱容量から排尿量を引いた値として算出した.結果:最大尿意時における若年女性群の膀胱容量は576 ml,高齢女性群の膀胱容量は505 mlであり,両群間で有意な差はなかった.若年女性群の排尿量556 mlは高齢女性群418 mlに対し有意に多く,逆に高齢女性群の残尿量88 mlは若年女性群34 mlよりも有意に多かった.最大尿意時において,若年女性群と高齢女性群は同等の平均尿流率(16 ml/s)を示したにも関わらず,高齢女性群において排尿量は少なく残尿量が多かった.若年女性群では膀胱容量に比例して尿排出時間は延長したが,高齢女性群では膀胱容量に関わらず尿排出時間が変化しなかった.高齢女性群では尿排出時間は延長されないため,膀胱に貯留した尿を排出しきれなかった.結論:高齢女性において蓄尿機能ならびに尿排出速度は若年女性と同様に維持されているが,膀胱収縮は膀胱容量に比例して持続しないため膀胱に貯留した尿を排出しきれず残尿が多いと考えられる.

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© 2012 一般社団法人 日本老年医学会
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