日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
症例報告
ウレアーゼ産生菌の尿路感染症に伴う高アンモニア血症によって意識障害をきたしたレビー小体型認知症(DLB)の1例
橋本 征治田村 嘉章小寺 玲美舘鼻 彩豊島 弘一大庭 和人豊島 堅志仁科 裕史千葉 優子荒木 厚
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2021 年 58 巻 2 号 p. 297-302

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抄録

症例は87歳女性.85歳時にレビー小体型認知症(DLB)と診断された.膀胱炎を繰り返しており近医にて抗生物質が頻回に処方されていた.受診3日前から歩行困難となり救急外来受診し,尿路感染症と診断し同日緊急入院となった.入院後夜間に不穏になりハロペリドールを使用され,以後JCSIII-300の意識障害が出現した.薬剤による過鎮静が疑われたが,意識障害が遷延したため血中アンモニアを測定すると199 μg/mlと高値であった.頭部MRIでは拡散強調画像で両側視床に高信号を認め,高アンモニア血症による所見に矛盾しない結果であった.尿培養からcorynebacterium urealyticumが検出され,ウレアーゼ産生菌による尿路感染症に伴う高アンモニア血症が意識障害の原因と考えられた.尿路感染症に対してABPC/SBT6 g/日を継続した.また,膀胱内残尿が多く尿カテーテルを留置したところ,アンモニア値は低下し,第5病日に意識状態は改善した.尿路感染症による高アンモニア血症は意識障害の原因となり,その機序としてウレアーゼ産生菌により産生されたアンモニアが膀胱内圧亢進により膀胱静脈叢より下大静脈に流入し肝臓で代謝されずに全身に循環することが考えられている.本症例では頻尿・排尿障害治療薬が膀胱内圧をさらに上昇させ,高アンモニア血症をきたした可能性もある.DLB患者は下部尿路症状の合併が多く意識障害を呈した患者においては本症を考慮するべきである.

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