抄録
中年期から老年期にいたる心電図異常の頻度と, その性, 年令, 血圧値の及ぼす影響を明らかにすることを目的として統計的考察を行った. 対象は過去7年間に東大老人科外来を訪れた40才から89才までの男子1,937名, 女子1,794名計3,731名である. 心電図所見は, Minnesota Code により分類した. 異常Qの頻度 (1-1, 1-2) は一般に低く, 男子で1.5%, 女子で0.4%であった. 左軸偏位は加令とともに上昇するが, 男子に著明であり, 血圧との関係は明らかでない. 高電位差は, 男子では加令との関係は認められず, 女子では直線的増加を示した. 両者とも血圧の高いものに頻度が高かった. STの虚血性低下は男女とも加令に伴って増加した. これと血圧値とはよく相関するが, 血清コレステロール値との間には関係が認められなかった. 第1度房室ブロック, 右脚ブロック, 期外収縮も加令とともに増加を示した. 心房細動は男子にのみ加令との関係がみられた. 房室伝導障害, 脚ブロック, 不整脈と血圧値との関係は認められなかった.