細胞内小器官レベルにおける副腎皮質ホルモン投与による肝細胞内小器官の消長の年令差を比較検討して, 老個体肝細胞内小器官の形態学的および機能的特徴の一端を知ろうとしてこの実験が行われた.
年令の異なった (若年群-生後70日, 中年群-1年, 老年群-2年) SMA雌マウス合計103匹を用い, 置前, 投与終了後2日, 9日, 16日の肝組織について, 本編では肝細胞内ミトコンドリア (以下“ミト”と略す), マイクロボディ, 小胞体などについて処置前, 処置後の超微形態像, 電顕酵素細胞化学的所見などの消長を, 年令差を中心として比較検討した.
肝細胞のミトはコーチゾン投与によって減数を示すが, 若年群では回復が速やかで, 中年群では減数は軽く回復も速いのに対して, 老年群では減数が強く回復は遅い. 一方ミトの増容は, 中年群でははるかに遅く軽度であるが老年群では増容は一層大であり, 回復は遅い. これら増容したミトにはとくに質的の変化なく, 電顕酵素細胞化学的に明らかな cytochrome c oxidase 活性がみられ, むしろ機能亢進の像を推定させた.
マイクロボディ数は若年, 中年群ではコーチゾン投与後ゆるやかに増加するが, 老年群では処置終了直後から増加し, 9日後ではとくに顕著な増数を示しその後旧に復する.
このようなミトとマイクロボディのコーチゾン投与後の消長の年令差にみられる興味ある差について考察を施した.
また粗面および滑面小胞体におけるコーチゾン投与後の消長は glucose-6-phosphatase 活性の消長と軌を一にし, 老年群に変化が強く回復の遅い点を認め, ミトと同様, 老個体における減数と予備力の低下を推定した.
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