抄録
山陰地方の小都市, 米子市に在住する65歳以上の老年者11,374人を対象にして, 知的機能, それに及ぼす諸要因を調べる目的で一斉調査を実施した. 方法は, 地区担当の民生委員が各対象者の自宅を訪問し, 調査表をもとに面接調査を行った. 知的機能は, Kuhn の Mental Status Questionnaire (MSQ) を著者らが改変した評価尺度を使用した.
1) MSQの質問のうち誤答数2以上の者を知的機能に問題のあると考えられる者として取り上げた. 知的機能に問題のあると考えられる者は, 加齢とともに増加するが, その増加は必ずしも直線的ではなく, 年齢による差がみられ, とくに80歳以上で目立った. 性差も認められ, 知的機能に問題のあると考えられる者は女に多かった (p<0.005).
2) 知的機能に問題のあると考えられる者は, 一般にふだんの健康状態が悪くなるほど多い傾向があり, 両者間にはある程度の相関がみられたが, その相関には年齢差がみられた. 知的機能に問題のあると考えられる者は, 配偶者のある者に比較してない者に比較してない者に多かった (p<0.005).
3) 自由時間の過し方から, 女の場合, 男に比較して頭脳活動をあまり要しない受動的な生活のあり方が目立った. 男の場合でも加齢とともに生活のあり方は全般に女性化するが, その変化には年齢差がみられた.
4) 得られた結果から, 老年期を65~75ないし79歳ころまでの老年前期と, 80歳以上の老年後期の2期に, あるいは後期を80~89歳までと90歳以上に分け, それぞれを中期, 後期とし, 老年期を全体で3期に分けることが可能かもしれない. そして老年者をめぐる各種の調査, 研究, 診療において年齢差, 性差は重要な要因であることをあらためて主張した.