抄録
43~86歳 (平均65歳), 男26例, 女8例の計34例の血栓性ないし動脈硬化性疾患患者に, 従来通りの食生活下高純度のイコサペント酸エチルエステル製剤 (IPA-E) を12週間経口投与し, 血小板数(PLT), 平均血小板体積 (MPV), 血小板クリット値 (Pct) および血小板サイズ分布幅 (PDW) の変動ならびにその変動に及ぼす諸因子 (血小板パラメーター前値, IPA-E投与量, 血漿IPA濃度の変化, 年齢, 性, 喫煙習慣, 糖尿病や高脂血症合併あるいはカルシウム拮抗薬や利尿薬併用の有無) の影響を検討した.
IPA-E 1,800mgまたは900mg連日投与すると, PLTおよび Pct は4週後に減少傾向, 8週後には有意に減少し, この変化は投与期間中持続した. MPVは12週後前値に比し減少傾向を示したが, PDWは投与期間中有意の変動を認めなかった. IPA-E 12週投与に伴うPLT, MPVおよび Pct の変化量・変化率はそれぞれの投与前値との間に負の相関関係を認めた. PLT, MPVおよび Pct は1,800mg投与群あるいは900mg投与群の両用量群とも前値に比し有意に減少もしくは減少傾向を示した. そして, その変化量・変化率は両用量群間に差を認めなかったものの, 血漿IPA濃度達成値 (12週後) は1,800mg投与群の方が有意に高値であり, IPA濃度達成値と Pct の変化率との間に有意の負の相関関係を認めた. 年齢, 喫煙, 糖尿病合併あるいはカルシウム拮抗薬や利尿薬併用の有無はIPA-E投与に伴う血小板パラメーターの変動に有意差を認めなかった. 男はIPA-E投与に伴いPLT, Pct が有意に減少したが, 女は有意の変動を認めなかった. IIb型, IV型高脂血症群のIPA-E投与に伴うPLT, Pct の減少は正脂血症, IIa型高脂血症群に比し有意に大であった.
IPA-Eは血小板パラメーターの改善に有用であり, 血小板凝集能が亢進している動脈硬化性疾患の進展防止あるいは血栓性疾患の発症予防に効果が期待できる可能性が示唆された. 特に, 男およびIIb型, IV型高脂血症患者ではIPA-Eの効果が大きい. IPA-Eの効果は900mg/日投与でも期待できるが, 1,800mg/日投与の方が十分な効果が期待できると思われる.