日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加齢に伴うラット赤血球膜内α-tocopherolquinone/α-tocopherol 値の変動
柳川 清尊武田 弘志松宮 輝彦高崎 優
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1999 年 36 巻 5 号 p. 335-341

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抄録

本研究では, 老化のメカニズムを考究する一環として, ラットの加齢および若齢グループの血漿および赤血球膜内 tocopherol (Toc) の酸化-還元動態を比較検討し, 加齢に伴う赤血球膜内α-tocopherolquinone (α-TocQ)/α-Toc 値の変動とその意義について考究した. Sprageu-Dawley 系雄性ラットの加齢 (66週齢) および若齢 (10週齢) グループの全血から抗酸化剤の存在下にて常法に従い血漿を分離した. また, 赤血球膜は Dodge の方法に従い分離しエタノール, ヘキサン抽出を行い測定用サンプルを作製した. 我々が開発した酸化-還元検出モードを導入した多重クーロメトリー高速液体クロマトグラフィー (HPLC) システムにより Toc 同族体 (α-, β-, γ-, δ-Toc) およびα-TocQ濃度を高感度に同時測定した.このシステムでは, 回路を閉鎖系にし, 測定中は常時窒素を送気した. 測定化合物の分離には逆相カラムC18を用い, 4つのクーロメトリー作用電極を直列に連結し, 電気化学検出器にて検出した. 移動相は40mM過塩素酸ナトリウム (NaClO4) を含む96%メタノール溶液を用い, 流速は1ml/分で測定した. 測定には約8分間を要し, かつ測定限界は50~100pgであった. 加齢グループは, 若齢グループに比較して血漿 total およびα-Toc 濃度は増加傾向であったが, β+γ-, δ-Toc およびα-TocQ濃度は減少傾向であった. 一方, 赤血球膜内 total, α-, β+γ-, δ-Toc およびα-TocQ濃度はすべて減少もしくは減少傾向であった. また, 赤血球膜内α-TocQ/α-Toc 値は, 加齢グループにおいて低値を示す傾向にあった. 以上の成績から, 加齢に伴いToc 同族体の血漿から赤血球膜への移行が減少すると共に, 赤血球膜内におけるα-Toc の利用率の低下が生じることが明らかになった. このα-Toc の関与する抗酸化機能低下が, 膜脂質過酸化の進行および酸化的ストレスに関連する老化のメカニズムに一部関与する可能性が推察された.

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