日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高容量ステロイドと筋弛緩薬で急性横紋筋壊死による遷延性筋麻痺を生じた高齢者の1例
佐藤 輝彦高橋 和久大熊 泰之水野 美邦能戸 幸司片江 正治檀原 高福地 義之助
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2000 年 37 巻 3 号 p. 250-254

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抄録

症例は多量の膿性痰を伴う喘鳴, 呼吸困難で入院した82歳の男性. 全肺野で著明な喘鳴を聴取した為, 抗生剤に加えステロイド (総量: hydrocortisone; 1250mg, methylprednisolone; 4250mg) を投与. 筋弛緩剤 (vecuronium bromide, 総量; 776mg) 使用下に人工呼吸管理を開始した. その後10日で感染を制御できた為, 人工呼吸の離脱を計るが四肢筋及び呼吸筋麻痺が遷延, 第13病日には褐色尿も出現した. CK: 1,500IU/l, ミオグロビン>2,000ng/mlと高値, 筋生検にて横紋筋融解を確認. 電気生理学的検査では神経筋接合部病変と筋病変の混在が示唆された.
以上より, ステロイドと筋弛緩剤による急性横紋筋壊死と診断した. その後筋力は徐々に回復し, 3カ月後に人工呼吸器を離脱. 6カ月後に杖歩行にて退院した. 従来より喘息重責発作等の際, ステロイドと神経筋遮断薬の併用による全身の筋力低下の報告があり, 特に肝腎機能の低下した高齢者の人工呼吸管理では注意を要すると考えられた.

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