抄録
β遮断薬は多くの大規模疫学試験にて生命予後を改善し, 心不全の患者に対しても血行動態, 自覚症状の改善が報告されている. しかし心不全患者や心予備能の低下している患者に対しては投与開始初期の心機能低下を来たすことがあり慎重な観察, 用量調節が必要と考えられている. また高齢者高血圧症患者では多臓器合併症を有していることが多い点からもβ遮断薬が降圧薬剤として選択されることが少ないのが現状である. 今回, 我々は高齢者においてもβ遮断薬が血行動態の改善に働くか, また副作用, 過度の降圧, 合併症の悪化などの忍容性の低下があるかを調べるために, 血管拡張作用を有するとされる非選択性β遮断薬である carvedilol を用いて, 高齢者高血圧及び狭心症患者を対象に検討した. 平均75.5±5.6歳 (65~88歳) の高血圧症または狭心症患者16名に対して carvedilol を10~20mg投与し投与前, 投与後3カ月で血圧, 心エコー図法による心機能計測, 臨床検査値を比較検討した. 血圧は163.8/87.6±15.6/11.2mmHgから141.6/76.9±16.6/11.7mmHgと有意に低下させた (p<0.001/p<0.01). 脈拍数は72.0±16.1bpmから63.9±11.4bpmへ低下させたが (p<0.05), 心拍出分画 (EF) は65.8±11.8%から71.2±11.4%へと増加させ (p<0.05), 心拍出量には有意な変化を認めなかった. また左室後壁厚が11.6±3.2mmから10.3±2.3mmへと減少傾向 (p<0.10) がみられた. 投与期間内において過度の降圧, 徐脈, 心不全などの副作用の出現例はなく, 臨床検査値についても投与前後において有意な変化を認めなかった.