日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
気管支喘息が先行した顕微鏡的多発血管炎の1老年者例
織田 雅也和泉 唯信宮地 隆史越智 一秀中村 毅伊藤 聖片山 禎夫中村 重信
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 39 巻 2 号 p. 209-213

詳細
抄録

患者は78歳女性. 15年以上経過した気管支喘息に加えて, 亜急性に多発単神経炎を発症し, 両足および左手のしびれ・疼痛および筋力低下・筋萎縮が進行した. 他医で prednisolone を最高80mgまで投与されたが改善せず, 歩行困難となり当院に転院した. 検査所見では, 好中球優位の白血球数増加, CRP上昇, 腎機能障害がみられ, P-ANCAの上昇を認めた. 腓腹神経の組織学的検査では血管周囲の著明な炎症細胞浸潤像と血管閉塞所見を認め, 有髄線維の脱落が非常に高度であった. 多発単神経炎および腎機能障害が増悪したため, ステロイドパルス療法を行い, 両足の疼痛は軽減し, 検査所見では炎症反応の鎮静化と腎機能の改善を認めた. しかし重度の筋力低下と感覚低下を残した. 本例は高齢発症のANCA関連血管炎症候群で, 気管支喘息の先行を認めアレルギー性肉芽腫性血管炎 (Churg-Strauss 症候群, CSS) が考えられたが, 経過を通して好酸球数増加は軽度にとどまりCSSの診断基準を満たさなかった. 本例は高度の腎障害を呈し組織学的に細小血管の炎症を認めたことから顕微鏡的多発血管炎と診断したが, 複数の血管炎の病型がオーバーラップした病態も考えられた. 血管炎症候群の予後は不良で, ステロイド治療に反応し比較的予後良好なCSSでも高齢発症の場合は治療成績が悪く, 重度の後遺障害を残して日常生活動作 (ADL) の低下を招きやすいため特に注意を要する病態である.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top