日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
爪床皮膚毛細血管像の研究
とくに血圧ならびに眼底所見との関連において
吉田 公平
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1969 年 6 巻 4 号 p. 253-265

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抄録

循環器管理の立場から, 高血圧症あるいは動脈硬化症における爪床皮膚毛細血管像の意義を検討し, 本検査法を評価する目的で, その顕徴鏡写真による形態分析を行ない, 血圧ならびに眼底所見との関連をみた.
検査対象は愛知県東加茂郡旭町の40才以上の住民623名と, 対照としての名古屋市内の高校生401名である.
まっすぐな頭髪針型の毛細血管型は高校生と40才代ではもっとも頻度の高い型であり, 加令とともに低率となるが, 交叉あるいは捻転を示す型は中高年者に高率であり, 加令とともにその傾向が一層著明であった. 迂曲のみ著明で交叉や捻転などのない型は, 中高年者に比し高校生に多く, また種々の形の蹄係が混在する像は中高年者に多くみられた. 血圧との関係は, 高校生の高血圧者には, 種々の変形した蹄係が混在する像, 動脈脚径の静脈脚径に対する比 (A/V比) が1/2以下のもの, 乳頭下静脈叢を認めるものが多く, 中高年の高血圧者には, まっすぐな頭髪針型のものが少なく, 交叉あるいは捻転を示すもの, 水平血管網を伴ないあるいは蹄係の短い未熟型を呈するもの, 2/3以下の小さいA/V比を示すもの, 乳頭下静脈叢を認めるものが多かった. 眼底所見との関係は, 中高年者で眼底異常所見のないものは, まっすぐな頭髪針型のものにもっとも高率であり, 眼底異常所見を有するものは, 頭髪針型以外の変形した毛細血管型のものに多かったが, なかんずく交叉あるいは捻転などを示す型のものに高率であって, II度以上の眼底変化の頻度もこの型に高かった, また乳頭下静脈叢を認あるもの, 2/3以下の小さいA/V比を示すものなどに有所見者の比率が高く, さらにA/V比が小さくなるにしたがい, 眼底変化も高度となる傾向がみられた. 以上のごとく, 高血圧者と眼底所見の異常を示すものには概ね共通した毛細血管の形態を認めたが, 眼底所見と毛細血管像との関係は, とくに50才を過ぎたものにおいて密接となる傾向を認めた.

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