日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高脂血症と血液凝固線溶系
半沢 敦正久山 栄一波柴 忠利木畑 正義水川 士郎藤井 靖久
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1969 年 6 巻 4 号 p. 266-274

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抄録

近年, 動脈硬化症に関する研究は基礎ならびに臨床医学の両分野において多大の注目をあびている. われわれは動脈硬化性諸疾患 (糖尿病, 心筋梗塞, 脳軟化症等) における脂質代謝と, 血液凝固, 線溶系, および血小板系に関して臨床的検討を試みた. また, 高脂血症を呈する動脈硬化性諸疾患に対して抗脂血剤, Dextran sulfate を使用し, 脂質の変動と血液凝固, 線溶系, ならびに血小板系の変化について検討した.
上述の動脈硬化性諸疾患における脂質と, 各脂質分画について, それぞれ高脂血症を呈するものと, 正常脂血群とに分類し, 凝固線溶系について比較検討したところ, 凝固系 screening test および線溶系では総脂質量,その他, cholesterol, triglyceride, phospholipids についてもまったく正常値群と高脂血群で差は認めえなかった. しかし凝固因子の単独測定, TGTにおいては, 総脂質量の高値群即ち高脂血症群と正常脂血症群とで比較してみると, 高脂血症群に於ては第II因子, 第V因子, BaSO4吸着血漿因子群および血清因子群で活性高値を認めた. すなわち, これ等動脈硬化性諸疾患において, 高脂血症群は正常脂血を示すものに比し凝固能の亢進を認めることができた. また, 血小板系に関しても, 血小板第3因子能, 及び粘着能は高脂血症群で亢進を認めた.
Dextran sulfate (MDS) を動脈硬化性諸疾患の高脂血症群に使用し, 血液凝固系に及ぼす影響を検討した. TEGにてr, kの延長, maの短縮, すなわち血液凝固能抑制効果を認めた. 特に血清 cholesterol の低下と凝固抑制効果は平行している. 凝固因子としては第V因子, 第VII因子, 血小板第3因子能の活性低下を認めた.

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