日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
骨そすう症におけるアミノ酸代謝に関する研究
第1報 臨床的研究: 骨そすう症とアミノ酸代謝
大畑 雅洋
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1969 年 6 巻 4 号 p. 275-281

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抄録

骨そすう症におけるアミノ酸代謝を検討する目的でアミノ酸経口負荷試験を行った. 対象は健康老年者7名と本症の重症患者11名, 軽症患者5名であった. 本症患者は, 肝, 腎疾患やその他の重大な疾患を有しないものを選び, 骨そすう症の診断基準は腰椎側面断層写真で椎体濃度と椎間板濃度の比が1.0以下のものとし, さらに椎体の圧迫骨折のあるものを重症, ないものを軽症とした.
被体者に早朝空腹時, 体重に比例した量のアミノ酸混合剤を水とともに服用させ負荷前, 負荷後1, 2, 3, 4時間に採血し, 血清1mlの遊離アミノ酸をガスクロマトグラフィー法により分析した.
負荷したアミノ酸混合剤に含まれかつ測定し比較しえたアミノ酸はバリン, ロイシン, フェニルアラニンである. バリンについては負荷前値は正常者63±7.7, 本症 (重症) 76±8.0 (平均値±標準誤差, 単位はμg/ml) で有意差はないが, 負荷後1時間値はそれぞれ151±9.0と215±21.3で本症患者 (重症) は正常者より有意に高く, 4時間値も本症患者 (重症) (178±16.3) が正常者 (139±8.7) より有意に大きかった.バリンの最高値も本症患者 (重症) が263±24.6, 正常者が192±5.5で本症患者が有意に高い値を示した. 軽症骨そすう症患者は1時間値が157±17.2, 4時間値が167±31.8, 最高値が226±25.3で正常者と骨そすう症 (重症) との中間的な値をとり, 正常者とのあいだに有意差はない.
ロイシン, フェニルアラニンについては本症患者と正常者のあいだに差がみとめられなかった. バリンは腸管吸収が速く, 肝臓での代謝の緩慢であることが知られている. バリンの1時間値と4時間値が本症患者で高いことは, 本症患者に軽微な一般的アミノ酸代謝異常があり, バリン負荷がそれを鋭敏に検出したか, あるいはバリンそれ自体の代謝異常のあることを示すと考えられる.

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