日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
骨そすう症におけるアミノ酸代謝に関する研究
第2報 実験的研究: サイロカルシトニンの骨たんぱく・アミノ酸代謝に及ぼす影響
大畑 雅洋
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1969 年 6 巻 4 号 p. 282-287

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抄録

サイロカルシトニン (Thyrocalcitonin, TCT) は血中カルシウム低下作用があり, それは骨吸収抑制作用によるとされる. TCTは骨そすう症の治療に有効である可能性が示唆されているので, TCTのたんぱく・アミノ酸代謝に及ぼす作用を検討した.
1) ウィスター系雄ラットにブタ甲状腺から抽出されたTCTを週6日間, 毎日50mMRC単位を皮下注射した. 3週間後, 絶食させたラットの一部から採血し, 残りのラットに2%バリン水溶液を1ml/100g体重, 経口負荷して1時間ごとに4時間まで数匹ずつ採血した. バリン負荷を行わなかったラットの大腿骨を採取し, ソフテックス撮影してその相対的骨皮質巾を計測した. さらにその骨の軟部組織をとり, 骨髄を除去し, 乾燥脱灰し加水分解してアミノ酸分析を行った. その結果バリン負荷曲線にはTCT処理群と対照群の間に有意差は見出されなかったが, TCT処理群の大腿骨の相対的骨皮質巾 (27±0.6%〔16〕) は対照群 (25±0.4%〔13〕) より大きく, 骨端部のアミノ酸分析では測定しえたアミノ酸アラニン, グリシン, バリン, ロイシン, ハイドロキシプロリン, フェニルアラニンのうち, フェニルアラニンの有意の増加がTCT処理群にみとめられた (フェニルアラニン, 対照7±0.6μg/mg〔5〕, TCT 10±0.8〔5〕).
2) 同系ラットに非絶食時TCTを20mMRC単位あるいは5mMRC単位を静脈注射して1時間後に静脈血を採取してアミノ酸分析を行った. 絶食ラットにも同様にTCTを静脈注射して1時間後の血中アミノ酸を測定した. その結果, 非絶食時の20mMRC単位注射群にアラニン (74±16μg/ml〔5〕, 対照135±17〔5〕), グリシン (53±7, 116±17), ロイシン (25±5, 65±16), フェニルアラニン (19±2, 25±1) の低下, 5mMRC単位注射群にフェニルアラニン (20±1) の低下をみとめた. 絶食ラットではTCT注射群と対照群のあいだに血中アミノ酸値の有意差をみとめなかった.

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