遺伝学雑誌
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TWO RACES OF DROSOPHILA MONTIUM
A PRELIMINARY NOTE
Hideo KIKKAWA
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1936 年 12 巻 3 号 p. 137-142

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抄録
Drosophila montium(トラフシヤウジヤウバヘ, 新稱)は DE MEIJERE. が1916年にジヤヴッから記載したのが最初で, 吾が日本では二つの異つた系統が得られる。A系統の核型は圖の1から2に見られる樣に二對の大形V染色體と一對の小形V染色體, それに一對の棒形染色體が加はつて合計四對の染色體から成立つてゐる。B系統ではAの小形V染色體が一對の棒形染色體で置き換へられてゐる。Y染色體は何れの系統も小さなV染色體でこれから見るとX染色體はAB共に一對の棒形染色體であることが分る(圖參照)。
唾腺染色體の構造は上記の異形染色體の本質に對て重要な暗示を與へる。若し他の猩々蠅で見られる樣に各染色體が紡錘絲附着點でクロモセンターに附着し自由端が遊離するとすれば, A系統では七本, B系統では六本の相當長い染色體が見られる筈である。處がAB兩系統共六本の染色體しかなく, 而も此の中の一木は他の五本よりも非常に短かく其の末端で再ひクロモセンターに附着して茲に環状染色體を形成してゐる(圖13)。同樣の環状染色體はAとBの雜種の唾腺細胞にも見られ, 且つ他の染色體の間には何等の異常も認められなかつた。斯樣な現象は次の假定, 即ち生殖細胞に見られる異形染色體はこの環状染色體に相當し且つ此の染色體は基部を除いて大部分が遺傳物質を有しないとして, 容易に説明される。事實遺傳物質を殆んど持たない染色體の存在は著者がアナナス猩々蠅で確めた處である。
形態的にはABの間に殆んど何等の相違も認められないが唯雄の前肢〓節にある櫛の齒數が違つてゐる。即ちA系統の數はB系統よりも可成り少ない(圖14及第1表)。此の櫛の齒數の遺傳は極めて特殊のものらしく, A×Bは何れを雌にとつてもAが優性として現はれてくる。然しF2ではB許り出てくる。戻し交雜を行つた場合も同樣でB型の雄許り生ずる。期樣な現象は現在の遺傳學的知識だけでは充分に説明されないが, 何分調査した蠅の數が少ないので正確な結論は後日を期して報告したい(第1表)。
一方 cardinal といふA系統に發見された劣性眼色因子を用ひた實驗ではF1もF2も全く同一系統の間で行つた樣な實驗結果を與へた(第2表)。勿論AB兩系統の間でも發育状態や交尾の模樣などに就いては明瞭な區別は認められなかつた。
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© The Genetics Society of Japan
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