2009 年 33 巻 2 号 p. 171-175
HPRT部分欠損症の妊娠女性患者の遺伝子診断や出生前診断の問題点について行った遺伝カウンセリングの結果につき報告する.症例は31歳の女性で,左足関節痛を主訴に来院した.理学所見上は左足関節炎も消退しており,左足関節の腫脹のみで特記すべき異常は認められなかった.血液生化学検査にて,血清尿酸値 8.8mg/dL,1日尿中尿酸排泄量1053mg/dayであったことから,尿酸産生過剰型痛風と診断した.著明な高尿酸血症および若年女性であることから,先天性プリン代謝異常症が疑われた.PRPP合成酵素,HPRT酵素活性を測定した結果,HPRT部分欠損症と診断した.本例はHPRT部分欠損症が明らかになったのちに妊娠が判明したため,遺伝子診断,妊娠継続の可否,出生前遺伝子診断,など様々な倫理面の問題が生じることとなった.遺伝カウンセリングの結果,当人の遺伝子診断は行ったが,胎児の出生前診断は行わず,妊娠を継続することになり,その後,無事に双子女児を出産した.先天性遺伝子異常を有する女性の妊娠と出産,出生前遺伝子診断などに対して行った遺伝カウンセリングについて報告する.