抄録
カルシウム拮抗薬が心臓の虚血,再潅流障害を保護する作用はよく知られている.なかでも,ジルチアゼムは有用な薬物として認められ,本薬物の虚血,再潅流時における心臓機能低下の保護作用は虚血による心筋内ATPレベル低下の阻止に起因することを支持する知見も多いが,この点には異論もある.本研究においては,ラットのランゲンドルフ式潅流心臓におけるジルチアゼムの効果を検討した.薬物処置は虚血前に行い,潅流液を完全に停止させる方法で虚血状態に導き,その後に再潅流した.その結果,対照実験における虚血,再潅流後の心機能の回復は20%であり,低下したATPレベルは回復しなかった.一方,虚血前のジルチアゼム処置は虚血直後の心筋内ATPレベルの低下を阻止しなかったが,再潅流後には心機能,心筋内ATPレベルともに虚血前状態近くまで回復させた.さらに,虚血中の心筋内に貯留されたプリン代謝物からの尿酸生成も対照実験より顕著であった.これらの成績から,ジルチアゼムの心機能保護作用は虚血中の心筋内ATPレベルの保持に依存していないと考えられ,また,心筋内の尿酸生成の亢進は必ずしも心筋障害の進展に関与しないと思われる.