日本草地学会誌
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バビアグラスの再生長過程と三要素増施の影響 : 生育,収量および無機成分の吸収経過について
五島 一成西村 利幸
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1967 年 13 巻 3 号 p. 160-166

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抄録

鉱質土壌においてバピアグラスに対する三要素増施試験を行ない,その再生長過程を経時的に追跡調査し,生育の様相および無機成分の吸収経過を明らかにするとともに,三要素増施の効果について検討した。その結果は次のようである。1.刈取り追肥後の再生長の生育相は,初年度と2年目ではやや異なり,初年度は再生長初期の草丈伸長期とそれ以降のほふく茎の伸長期の二つに大別できる。2年目になると,ほふく茎がほぼ完全に地表をうっぺいしてしまうために,生育は草丈の伸長と,生草重の増加が相伴ってほぼ直線的に増加する。2.各再生長期間における生育量は気温に対する感応が高く,20℃以下では著しく生育が停滞した。しかし,干ばつに対する抵抗性はかなり強く,夏季干害の著しい鉱質土壌でも,干ばつ時に比較的安定した良好な生育を示した。3.再生した地上部の無機成分含有率は,概して再生長の初期に高く,生育の進展につれて低下したが,石灰のみは逆に生育が進むにつれて増加した。また,初年度は燐酸の含有率が2年目に比べ著しく高かった。養分吸収の経過は再生長初期に燐酸の吸収が著しく,ついで窒素,加里の吸収がさかんとなり,後期には石灰の吸収量が顕著に増大した。窒素,燐酸,加里は後期には吸収が停滞もしくは低下した。4.三要素増施の効果は,窒素増施が最も効果が大きく,生育面では,初年度は分けつの増加,ほふく茎の伸長が著しかった。2年目は初期再生長の促進に効果があった。したがって乾物収量は初年度は約4割,2年目約2割の増収となった。しかし,肥効は刈取り回数の進展に伴って次第に低下の傾向を示した。燐酸増施は,生育収量面での効果は窒素に比べ小さかったが,窒素増施と同様に再生長の初期生育が良好であった。また,夏季干ばつ時の干害軽減に効果が認められた。加里の増施は2か年間を通じてほとんど効果がなかった。

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© 1967 著者
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