日本草地学会誌
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生長様式の違いがオーチャードグラス草地の乾物生産に及ぼす影響
三田村 強
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1972 年 18 巻 3 号 p. 152-160

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抄録
草地の乾物生産は,種子発芽後の生長,栄養生長,越年した牧草の萌芽生長,生殖生長,そして刈取後の再生長など,種々な生長様式のもとで得られる。本研究は生長解析の手法を用いて,オーチャードグラス草地における,これらの生長様式の特徴について検討した。1)播種後の初期生長における地上部全乾物重の増加速度は非常に低く,光を十分に利用出来る効率的なLAIに発達するまでの期間が比較的長い。2)刈取後の初期における再生長は,stubble中の貯蔵物質を元にして始まるので,地上部全乾物重の増加速度は,播種後の生長に比して高く,その効率的なLAIに発達するまでの期間が比較的短い。3)越年した草地の萌芽生長におけるLAIの増加度は,高く,この傾向は再生長の場合と同様である。4)Loptに達した時期以後において,生殖生長を続ける場合,光合成産物は同化系よりも非同化系に,より多く分配される。したがって葉面積の増加度は減少し,Loptの状態の効率的な葉層構造が長期間保たれる。この結果,NARの減少は緩慢で,生殖生長を続ける場合の最大地上部全乾物重は1550g/m^2にも達した。他方,Loptに達した時期以後も栄養生長を続ける場合は,さらに同化系の拡大を続ける。したがって,その葉層構造は,光エネルギー利用効率を低下させる受光態勢に変化する。この結果,NARの減少度もかなり高く,栄養生長を続ける場合の最大地上部全乾物重は780g/m^2に停った。
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© 1972 著者
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