抄録
イタリアンライグラスとの連続栽培におけるケイヌビエの安定多収栽培法の確立に資するため,刈取時の生育状態と刈取後の再生長との関係について実験し,次の結果を得た。1.再生過程における乾物重はS字曲線をえがいて増加した。再生初期における乾物増加速度は刈取前のそれより低下した。その低下の程度は刈取時の生育量が大きいほど大であった。2.刈株乾物重およびその中のT.A.C.含量ともに再生長との間に明確な関係が認められなかったが,刈株中の全N含有率は再生茎歩合と高い正の相関を有し,再生初期の乾物増加速度を高めた。3.本実験では刈取時の草丈が約140cm,乾物収量が約80kg/aになっても倒伏はなく,刈取後に生長を停止する再生障害は起らなかった。再生茎歩合の低い条件での再生長は遅れて発生する新しい分けつによって構成されるので,遅延型の再生障害と呼ぶことができる。再生長の遅延は草丈が約70cm・乾物収量が約30kg/a以上のときに顕著であった。4.年間の収量を高めるには,再生長の遅延が起る回数と期間をできるだけ少なくして,生育全期間を通じての平均生産力を高めるよう刈取時期を設定する必要のあることが考察された。