日本草地学会誌
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チモシー斑点病菌Heterosporium phlei Gregoryの分生胞子形成に関する2・3の観察
〓見 明俊筒井 佐喜雄
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1975 年 21 巻 4 号 p. 227-233

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抄録
チモシー(Phleum pratense L.)の斑点病抵抗性の検定に用いる病原菌(Heterosporium phlei GREGORY)の均一な分生胞子を大量かつ迅速に得るため次の実験および観察を行なった。1.予め常法で得た分生胞子を滅菌水にけんだくし,その一定量をコマゴメピペットを用いてV8 juice寒天培地に注入・移植した。分生胞子の形成は移植後36時間にはじまり,48-60時間に急増し,4日にはほぼ最高値に近づいた。分生胞子は1隔膜が圧倒的に多く,つねにほぼ50%を占めた。無隔膜胞子は当初多く5日まで減少し以後はほぼ一定の出現率を示した。これに対し,2および3隔膜胞子は当初少なく次第に増加して5日以後は一定した。したがって,移植後5日以後には形態的に均一な分生胞子を得ることができる。本菌の分生胞子には5隔膜まで認められた。2.本菌分生胞子の形成培地にはV8 juice寒天培地を用いると標準処方(20%)が実用的に良く,胞子形成の最適温度は18℃附近にあった。3.分生胞子の形成を経時的に観察した(図版3)。また,本菌の分生胞子は分生子梗上に鎖生したまま容易に発芽した。4.分生胞子は隔膜数が多いほど大型で,多数の発芽管を伸長させた。しかし,1細胞あたりの発芽管数は隔膜数の増加にしたがってむしろ減少した。5.移植後胞子形成が始まるまでにおよそ36時間を要する。また,分生子梗が形成されたのち,その先端に1個の分生胞子が形成されるのには約2時間,さらに,次の胞子が鎖生されるのにはおよそ3時間を要した。
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© 1975 著者
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