抄録
本試験は,オーチャードグラス実験個体群を用い,7段階の密度処理のもとで,株数減少と茎数変化との相互の関係を調べ,個体群内におけるいわゆるnatural thinning現象がどの様に起っているのかを明らかにせんとして行われた。各密度区間において,平均個体(株)重と現存株密度との間に,競争密度効果とみなしうる相互関係は認められたが,高株密度側において個体(株)重の増加に伴う密度の減少経過の現われ方が不明瞭であり,ここでの現存株密度が,3/2乗則の場合の個体密度に相当しているかは明らかでない。一方,個体(株)の重量増加は,茎数増大と密接に関係しており,特に高株密度の側で単位面積あたり現存分けつ密度と平均分けつ重との両者間の経時的な軌跡が,傾きほぼ-1.5の直線に沿って得られたことから,既報で指摘したように,イネ科牧草個体群内における密度の調節は,株数に対するそれよりも,各shootに対する調節を先行させている可能性が大きい。しかし,こうした密度調節の可能性が,生殖生長の段階や再生長の場面で存在するのか,存在するとすればどの様な存在様式をとるのかは今後の問題点として残された。