日本草地学会誌
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イタリアンライグラスにおける非構造性炭水化物の品種・個体間差異 : II.2倍体イタリアンライグラスにおける品種問差異
田村 良文星野 正生
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1979 年 25 巻 3 号 p. 178-186

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抄録

本研究では秋季自然条件下に生育した栄養生長期のイタリアンライグラスにおける非構造性炭水化物の含有率,およびその特性の品種・個体間における差異を究明し,育種への基礎的な資料を提供することを目的とし,本実験では,2倍体イタリアンライグラス17品種における品種間差異を調査期をかえて検討した。1)最終調査時における茎の非構造性炭水化物含有率(NSC含有率)には乾重当りで35%〜47%にわたる明確な品種間差異が認められた。2)茎のNSC含有率の品種間差異の大部分はフラクトサン含有率の品種間差異に起因しており,単・小糖類含有率にはフラクトサン含有率に見られるような明確な品種間差異がないものと推察された。3)フラクトサン含有率の高い品種ほどフラクトサンの重合度が高い傾向を示すことが認められた。4)NSC含有率,あるいはNSCの特性の品種間相対差は葉身と茎で,また各調査期で同様な傾向を示すことが認められた。しかし,調査後期において品種間差がより明確であった。5)極早生,早生品種においてNSC含有率,フラクトサン含有率,フラクトサンの重合度が低く,したがって非構造性炭水化物の蓄積的な性格の劣ると考えられる品種が多く,一方,中,晩生品種にはこれと相反する傾向を示す品種の多いことが認められた。しかし,例外的な品種の存在も明らかであり,早晩性により明確に区分出来ない。6)調査の後半期においてNSC含有率は地上部生育量,葉積重と有意な正の相関を示した。これらの因果関係について形態的あるいは生理的側面からの考察が加えられた。

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© 1979 著者
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