日本草地学会誌
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牧草根の発達と多糖類分泌に関する研究 : I.数種作物の根系発達と根からの多糖類分泌
小林 裕志鈴木 昇
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1979 年 25 巻 3 号 p. 222-226

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抄録

イタリアンライグラス・アルファルファ・陸稲・小麦・大麦の5草種を供試し,水耕培地での初期生育期間中におけるグルコースならびにウロン酸の分泌を定量した。はじめにその根系形態にしたがい,イネ科4種をイタリアンライグラス・陸稲の類と小麦・ライ麦の類とに大別した。後者は不定根から分枝する側根の数や総延長が豊富であり,側根主体の根系といえる。5週令での多糧類分泌を5草種すべてについて検討した結果,麦類4〜5,陸稲1.8,イタリアンライグラス1.0,アルファルファ0.7mg/10個体/日(グルコースの場合)の分泌量で麦類が圧倒的に多かった。このような種間差は個体当りで換算した場合に明確になる。このことから,個体当りの根量の多少が分泌量に直接的に関与してくるものと考えられる。次に,イタリアンライグラスと陸稲について11週令までの生育令による分泌量変動をみた。両草種とも3週令にくらべ11週令では個体当り約10倍の分泌量を示した。これを根重当りに換算すると両草種とも5週令において分泌量のピークを示した。一方,相対生長率からみた根系発達は3〜5週令においてもっとも旺盛であった。これらのことから,草体生育の旺盛な時期において根からの活発な多糖類分泌が推察される。以上の結果から,牧草においても根からの多糖類分泌は認められるものの,麦類にくらべその量はかなり少ないことが知れた。また,牧草の場合にも根系発達の旺盛な段階で多糖類分泌も最多になることが知れた。

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© 1979 著者
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