日本草地学会誌
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暖地型飼料作物の不良土壌耐性の草種間差異 : I.暖地型飼料作物の生育,養分吸収に対する培地pH及びAlの影響
実岡 寛文神田 則昭尾形 昭逸
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1986 年 32 巻 3 号 p. 251-260

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抄録
暖地型飼料作物であるハトムギ(HA),パールミレット(PM),ソルガム(SS)およびローズグラス(RG)を培地pHが5.0(pH5.0区)と4.2(pH4.2区),培地pHを4.2としてAl濃度を5ppm(Al5区),20ppm(Al20区)の水耕条件下で栽培し,各草種の地上部・根部生育量,無機成分含有率などを測定し,暖地型飼料作物のAl耐性の草種間差異とその耐性機構の解析を行った。その結果,(1)Al無処理区では4草種の地上部・根部とも正常に生育したが,Al5,20区のRG,SSでは根先端の肥大,褐色化などの根異常化および分げつ発生数の減少,葉脈間クロロシスさらには葉の萎凋などが認められ生育が著しく抑制された。(2)pH5.0区の地上部および根部乾物重を100とした時のAl20区の相対値を指標としたAl耐性は地上部ではPM≒HA≫SS>RGの順で,根部ではHA>PM≫SS≧RGの順であった。(3)RGの地上部P,Ca,Mg含有率,HA,SS,PMの地上部Ca,Mg含有率はAl処理によって著しく低下したが,RGの地上部K含有率,HA,PM,SSの地上部P,K含有率は影響を受けなかった。(4)Al処理により根部P含有率はPM,SS,RGでわずかに低下し,HAでは低下せず,Ca含有率はHA,SS,RGで低下,PMでは低下しなかった。4草種の根部K含有率はAl処理により影響を受けなかったが,Mg含有率は著しく低下する傾向にあった。(5)Al20区での各草種の根部Al含有率は0.63%から1.09%と著しく高かったが,根部Al含有率とAl耐性の強弱の間には関係は認められなかった。(6)4草種のP,Ca,Mg,K吸収量はAl処理によって低下し,その低下はHA,PMで小さく,RG,SSで大であった。またAl処理によってP,K吸収量に比較してCa,Mg吸収量の低下が大きい傾向にあった。(7)Al2.0区におけるK/Mg当量比はRG:13.97,SS:11.25,PM:6.28,HA:5.54であった。以上の結果より,暖地型飼料作物のAl耐性には草種間差異が存在し,その耐性の強弱の差はAlが過剰に存在する条件下でCa,Mg,特にMgを吸収利用する能力の差に帰因するものと推察された。
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© 1986 著者
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