日本草地学会誌
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永年放牧地におけるダニ生息密度と環境条件 : II.マダニの定量的調査法の検討
大竹 秀男菅原 和夫伊藤 巌
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1986 年 32 巻 3 号 p. 261-266

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抄録
採集効率の高いマダニの定量的調査法を確立することを目的として,土壌小動物の採集に用いられているTullgren装置を応用したマダニ採集法について検討した。1)フタトゲチマダニの幼ダニを生草と土壌に混入し,Tullgren装置と改良Tullgren装置によりその回収率を求めた。改良Tullgren装置は供試試料の上に穴あきトタンをかぶせ,熱が試料全面に行き渡るように改良した。改良Tullgren装置による回収率は90%以上であったのに対し,従来のTullgren装置による回収率は25〜30%と低かった。また,土壌中のマダニの捕集には,牧草の約2倍の時間を要した。2)ポットを用いた閉鎖区内におけるマダニの回収率を,地上部(草)と表土に分け改良Tullgren装置により求めた。その全回収率は平均76.4%であったが,それに占める表土からの回収率は4.4%ときわめて低かった。3)試験圃場での放飼マダニのフランネル・座ぶとん法による回収率は放飼後6〜10日で平均23.1%であった。一方,刈り取り草中のマダニの改良Tullgren装置による回収率は平均52.3%であった。さらに刈り取り跡地のマダニのフランネル法による回収率は平均4.7%であった。すなわち,改良Tullgren装置とフランネル法とを併用した採集法による放飼後3〜8日の平均回収率は57.0%を示した。この方法による放飼直後の推定回収率を回収率と放飼期間との回帰式から算出すると66.2%となった。以上により,改良Tullgren装置とフランネル法とを併用した採集法は従来の調査法と比べてより精度の高い定量的調査法と考える。また,改良Tullgren装置は越冬個体など不活動期のマダニの採集に適している。
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© 1986 著者
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