日本草地学会誌
Online ISSN : 2188-6555
Print ISSN : 0447-5933
ISSN-L : 0447-5933
牧草の被度および重量の分布型と枠面積
佳山 良正
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1961 年 7 巻 1 号 p. 21-27

詳細
抄録

牧草の分布型を判断することは,草地状況を量的に判断し得るのみならず,将来をも予測できるために重要なことである。一方草地の実態を把握するために用いる草の被度および重量の測定は,どの程度の抽出比をもって枠の数を決定すべきかまた枠の大きさはどのくらいがよいかという問題も極めて重要な問題である。筆者はこの2つの問題について1960年春に校庭に造成された5aの実験草地に縦14m横16mの比較的均質にみえる部分を選び,1m×1mの枠を連続的に224個設けて,おのおのの中に生育するラジノクロバーおよびオーチャードグラスを主体とするイネ科草の被度と重量を測定した。そして枠面積の大きさおよび形の違いによる被度および重量の実験誤差を計算した結果つぎのようであった。1)ラジノクロパーの被度は20cm×20cmの枠では,双峯曲線を示すが,40cm×40cmの枠あるいは1m×1mの枠では,単純な曲線となり,正規型または2項型を思わせる分布型を示す。従って分布型判定の上からは枠の大きさ,40cm×40cmの枠で一応間に合うと考えられる。なおマメ科,イネ科を含めた全体の重量の分布は,1m×1mの枠でも分布型の判定ができるが5分布型および変動係数より判断して4m^2の枠面積,2m×2m,1m×4mが適当であるとみなした。またクロバーの重量分布も1m×1mあるいは2m×2mの枠面積が適当しているとみられた。2)被度,重量ともに枠面積が大になるほど変動係数が減少するが,劣勢草であるオーチャードグラスその他のイネ科牧草は,枠面積の拡大がそれほど大巾に変動係数の減少をみせない。3)本実験草地における調査から,ラジノクロバーの被度調査における1m×1m枠の抽出比は,10%の誤差を許容すれば,1.8%でよく,ラジノクロバーおよびオーチャードグラスを主体とするイネ科牧草を加え合せた全重量の1m×1m抽出比は,10%の誤差を認めれば,4%であり,同様に優占草ラジノクロバーの重量についても4%であった。もし実験誤差を10%より3乃至2%に低めて,精度の高いものを要求するならば,抽出比はいちじるしく増大して,事実上草地調査が不可能になることがわかった。

著者関連情報
© 1961 著者
前の記事 次の記事
feedback
Top