日本草地学会誌
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エチル燐酸水銀粉剤によるレンゲ雪ぐされの防除
伊東 達雄宮本 松太郎沢 豊則
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1961 年 7 巻 1 号 p. 27-31

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抄録

1957年秋から1960年春まで,当地方の菌核病を主要とするレンゲ雪ぐされの防除を目的として,EMP粉剤の撒布試験を行ないつぎの結果を得た。1. EM (Hg1.0%) はa当り500grを,菌核病の発病初期に圃場撒粉した場合,雪ぐされ面積が著しく少なく,レンゲ収量が著しく多く,消石灰(a当り3.8kg)に比較して,効果は顕著であつた。2.その後,同じ要領によつて,EMPのHg濃度と雪ぐされ被害との関係を検討し,有効な最低Hg濃度は0.4〜0.5%とみられた。3.菌核病の発病が特に激甚な条件下で行なわれた,Hg濃度と散布期についての試験では,Hg0.5%剤でも子器形成期間中の散布では効果が少なく,その後の菌糸蔓延盛期の散布によつて著効が認められ,菌糸に対しても著しい殺菌作用をもつものと考えられた。4.鉢内に播下した菌核にEMPを撒粉した硝子室内の実験では,菌核の子器形成が阻害され,子器形成後に撒粉した場合は,子器が黒変枯死し,子嚢胞子の噴出機能が失なわれることが認められたがその程度は,Hg0.3%よりも0.5%で明らかに大きく,また子器の枯死率は子器形成始期よりも子器形成後期の撒布で大きく,圃場試験の結果とほぼ一致した。よつて,これまでの試験結果から,菌核病の激発条件下では最低0.5%程度のHg濃度が必要で,散布期を1回に限る場合は,菌核または子器の処理による予防よりも菌糸の処理による治療効果をねらうほうがよいように考えられる。

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© 1961 著者
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