地理学評論 Series A
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論説
大正・昭和戦前期における大田植の社会的基盤と地域的意義
――広島県西城町八鳥を事例として――
髙野 宏
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2010 年 83 巻 6 号 p. 565-584

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抄録

大田植の習俗は,民俗学と芸能史の立場から重要な習俗とみなされてきた.前者では,日本の古い田植の様式であり,日本人に固有の信仰を残しているとされた.後者では,その芸態が田楽史を明らかにする重要な手掛かりと考えられた.大田植に関する研究は,こうした学術的な関心に基づいて推進された.しかし,従来の研究では,同習俗の社会的基盤や地域社会に果たす意味・機能の問題には,ほとんど関心が払われなかった.本稿では,以上の問題意識に基づき,大正・昭和戦前期の広島県西城町八鳥の事例を取り上げ,大田植と地域社会との関係を考察した.その結果,①大田植の習俗は経営危機に陥った畜産農家の救済を目的とし,彼らと取引関係にある家畜商によって主催されたこと,②そこには畜産業の発達に伴う家畜商の社会的地位の向上,中核的農家の不在が関与していたこと,③牛小作と相まって,当地域での畜産業の構造・生産を安定化していたことが判明した.

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© 2010 社団法人日本地理学会
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