地理学評論 Series A
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論説
下北半島尻屋崎砂丘の理化学特性と形成史
谷野 喜久子細野 衛渡邊 眞紀子
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2013 年 86 巻 3 号 p. 229-247

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抄録

日本の海岸砂丘構成層の起源として海浜砂,テフラ,大陸風成塵などが知られるが,個々の構成層の形成物質を検証した例は少ない.本研究は構成層の理化学特性に基づき,尻屋崎砂丘の起源と形成史を考察する.砂丘は田名部段丘面(MIS5e相当)上の尻屋崎ローム層を覆い,埋没土層を境に構成層I~Vからなる.最下位層Iを除く上位層II~Vはbi-modal(シルト・砂各画分)の粒度組成を示し活性アルミニウムに富む.この特徴と明度・色特性(H2O2処理)が尻屋崎ローム層に類似することから,砂丘はローム層と段丘構成層の剥離物が再堆積した物と考えられる.砂丘砂の理化学特性(TC≧1%,MI≦1.7)は,それが二次的な風化テフラ付加による黒ぼく土様の化学的特性と腐植性状をもつテフリック レス デューンであることを示唆する.これは地形史的に冬季北西風と直交する西海岸の段丘崖に風食凹地(ブロウアウト)が発達し,その後にヘアピン・縦砂丘が分布することと矛盾しない.

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© 2013 社団法人日本地理学会
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