本稿では日系電機・電子部品メーカーA社の中間材を扱う上海における三つの販売部門を取り上げ,製品特性の違いにより取引先企業の本社所在地別構成や人材現地化の程度にどのような差異があるのかを検討した.結論として三つの総括部のうち,中国企業向けの販売比率が最も高い第1総括部では,管理職などへの中国人人材の登用が進んでおり,現地法人からの提案を受けるかたちで中国市場の需要に合わせた製品の開発・販売も行われていたが,それが低い第2総括部と第3総括部ではこのような傾向はみられなかった.特に第3総括部では,垂直統合型の製品を販売しているため,グループ企業などの日系企業への販売が多く,中国人人材の管理職への登用はあまり進んでいなかった.同社では今後一層人材の現地化を進めていく必要性が認識されていた.その一方で同社は,日本本社が取引に関する決定権を持ち続けながら,本社の現地法人への支援機能を強化する方針も採っていた.