近年,地理情報システムを用いた歴史地理学研究が活発化しており,歴史的な地理情報の整備が進んでいる.しかし整備には多くの時間を費やし,また大量の歴史的な地理情報の取得や作成に適したシステムの整備は不十分である.住所を位置座標に変換する手法であるアドレスジオコーディングを用いたシステムは存在しているが,どれも現在の住所を対象とするものであり,明治・大正期の住所は扱うことができない.そこで本研究では旧東京市15区の住所を位置座標に変換するシステムを構築し,歴史的な住所を位置座標に変換する作業の効率化を図った.処理時間について計測を行った結果,十分実用的な速度で動作することを確認した.また,時期の異なる住所による認識率の比較を行った結果,1890年代から1920年代の住所において高い認識率を示すことが明らかとなった.構築したシステムは「近代東京ジオコーディングシステム」という名称で公開した.