抄録
1. 定置漁業はさけ・ますが主で斜里・標津が卓越している.ことに斜里のウトロは定置漁業に依存し,漁期にはウトロ以北知床岬の間に季節的に移住して操業する.
2. 共同漁業はこんぶ採取と毛がに篭網漁業に特色がある.こんぶは利尻こんぶで岩石海岸の稚内と羅臼が生産地域をなしている.羅臼ではこんぶ採取期に知床半島北部に季節的移住が行われる.
毛がに篭網漁業は広大な大陸棚を前面に持つ常呂から浜屯別にいたる地域の漁民が従事し,主漁場に近い雄武・枝幸・紋別の生産が優位にある.
3. 許可漁業はほたて桁網漁業・さんま棒受網漁業・中型機船底曳網漁業・油ざめ浮延縄漁業が主である.ほたては北見沖と野付岬付近の大陸棚が漁場で,紋別・湧別・常呂・網走・枝幸が主産地である.さんま棒受網漁業は紋別沖合が主漁場をなし,網走・紋別を基地に漁獲する・漁期が遅いため太平洋海区からも入会出漁を行う.
中型機船底曳網漁業は常呂沖から樺太島にわたる広大な大陸棚を漁場とし,網走・紋別・枝幸・稚内を基地にして,すけとうたら・たら・ほつけ・油ざめを漁獲する.油ざめ浮延縄漁業は網走・常呂が卓越し, 200m等深線付近を漁場とするが,晩秋には接岸して底棲になるので機船底曳網の漁獲によることになる.
4. 区画漁業はサロマ湖でかきの養殖とほたての採苗および養殖が行われ,サロマ湖依存の漁民は320戸に達する.
5. 漁獲物統計を地域的に整理すると魚種多様,大生産地域と魚種寡少,少生産地域に分けられる.前者は多角的経営を行う羅臼と沖合漁業に主体を置く網走・紋別・枝幸・稚内であり,後者はその他の地域である.
6. 漁船の分布を見ると多数漁船地域と少数漁船地域に分けることができる.いずれも前項各地域に一致し,しかも前者は漁船の大型化近代化した地域であり,後者は然らざる地域である.
要するにオホーツク海沿岸の水産業は,東部は岩石海岸を漁場とする沿岸漁業,中部および西部は大陸棚を漁場とする沖合漁業に主体をおいているのである.