地理学評論
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新潟の地盤沈下
中野 尊正武久 義彦
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1960 年 33 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

新潟の地盤沈下の諸原因のうち,地殻運動および表層の圧密に起因する沈下量を吟味することがこの小論の目的である.
第三紀層において認められる地殻運動が冲積世にまで及んでいることは,新潟平野縁辺の各地で地形,地質の上に認められる.一方地表下においては,洪積世末の最終氷期の低位海面に対応する扇状地礫層と考えられるG1層は,当時の海面よりはるかに下位に位し,後氷期以降今日まで年平均して3.7mm/年(市内山の下)の沈下を示したと考えられる.水準測量が最初に行われた1899年いらい60年間にG1層は220mmほど地殼運動により沈下していると云える.一等水準点標石の地形,地盤的な立地条件を調べ沈下量との関係をみると,表層の圧密に起因すると考えられる沈下量はここ60年間に50mm内外と考えられる.
以上により1899年いらい1958年まで60年間に認められている新潟の地盤沈下量のうち,地殻運動に起因する部分は50%,表層の圧密によるもの10%,その他ガス水汲み上げ等人為的原因によるもの40%ということができる.最近示されている異常な沈下量については前二者すなわち,自然的原因による沈下の占める比率は5%以下にすぎない.

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