地理学評論
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奈良盆地における水利集団の分布と水利秩序について
堀内 義隆
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1970 年 43 巻 3 号 p. 171-182

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抄録
奈良盆地には古くから井出郷,池郷と呼ぼれる多数の水利集団が分布している.大部分は灌漑集団であるが,若干の排水集団もある.これらの集団は数個の部落からなり,鍵元,井司と呼ぼれる中心部落によって強固な団結をなしている.部落によっては二つ以上の灌漑集団や排水集団に加入しているものもある.部落や集団の相互間には,引水量,水利労役などについて,古くからの取りきめがあって水利関係は複雑である.このような関係によって部落間や集団間に水利権の差があり,階層が形成されている.大きい水利集団では数個の部落の小集団がそれぞれ水利権の大小によって幾つかの段階を形成している.井出郷は盆地の東南部の河川灌漑地に密集し,池郷集団は分散的であるが,盆地の北部や南西部の溜池灌漑地にやや多い.そして排水集団は盆地中西部の河川の合流地付近に分布する.水利集団の構成は平均3部落で,灌漑面積は50ha以下の小規模が多い.灌漑面積の小規模なのは,盆地の河川の短小なこと,巨大な水源がなくその上溜池も大和の皿池といわれる貯水量の少ないことがその根本原因である.そのほか荘園や藩領が細分され,巨大な用水源の開発の困難であったことも原因の一つとしてあげられる.このような水利集団は中世頃から形成され,その後種々の変化を経てきたが盆地では細分化の傾向が強い.最近は用水源の開発が進み,水利改良の発展などによって従来の水利秩序が再編成されつつある.
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