抄録
わが国の河川の年流出率を水収支の立場から考察した。既存の流量および降水量資料を用いて大淀川,筑後川,江川,柱川,大和川,木津川,矢作川,北上川の各年の流出率を計算し,その妥当性を降水量,流出量,蒸発散量の三者をクロスチェックすることによって吟味した.その結果,江川と大和川以外は観測値の精度が不十分であり,流出量と降水量の比として年流出率を求めることは,特定の流域を除くとむずかしいことが明らかになった.またThornthwaiteの方法による実蒸発散量の全国分布図の値と実験流域からの蒸発散量を比較した結果,山岳地域にいては前者のほうが後者よりも大きく,平地においてはその逆の傾向が認められた.わが国の河川流域からの蒸発散量はほぼ400~1,000mmの範囲にあるものと考えられる.これらの結果から判断すると,従来まで一般にいわれているわが国の河川の年流出率は大きすぎ,とくに90%を越える流出率をもつ河川の存在は多雪地域以外では考えられない.年流出率は,降水量と蒸発散量から計算したほうが妥当な値がえられる.今後の水資源の開発,利用において,蒸発散量を正しく評価することは重要である.