抄録
目的:平成20年度より実施された特定保健指導では,内臓脂肪型肥満とその要因となる生活習慣を改善する指導が要求されている.しかし,行動目標を実行可能な範囲で設定すると,体重や腹囲の大幅な減少が見込めないケースも少なくない.そこで,体重3kgと腹囲3cmの減少により,検査データの変化がみられるのかを明らかにすることにした.
方法:人間ドックを受診したN健康保険組合員のうち,「積極的支援」に該当した男女82名に特定保健指導を実施し,実績評価では特定健診と同等の血液検査を実施した.そのうち平成21年3月31日までに実績評価が終了した47名を対象に,体重3kg,腹囲3cmを減少の目標値とし,体重・腹囲ともに目標を達成した群,腹囲のみ目標を達成した群,体重のみ目標を達成した群,体重・腹囲ともに目標を達成しなかった群の4群に分け,指導前後の血液データを比較検討した.
結果:体重のみ達成群は対象者が1名であったため,検討から除外した.達成群では中性脂肪,ALT,γ-GTPが,腹囲のみ達成群ではALTが有意に低下した.非達成群では収縮期血圧が有意に上昇した.達成群では他群と比較して,血圧,中性脂肪,HDL-コレステロール,ALT,γ-GTPにおいて好転者の割合が高かった.
結論:腹囲3cmに加えて体重3kgの減少は,検査データの低下に有効であることが示唆された.