地理学評論
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八重山諸島における遠距離通耕
浮田 典良
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1974 年 47 巻 8 号 p. 511-524

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抄録
沖縄県八重山諸島(石垣島・西表島やその周辺の島々)では,数kmの遠隔地まで水田耕作にかよっている農家が少なくない.石垣島では,島の南岸の集落から北部の水田まで,かつては馬または馬車で,いまではオートバイや自動車で通耕している.また西表島については,小さな離島(竹富島・新城島・鳩間島)からの船による通耕がみられる.遠距離通耕の発生要因は二つあった.第一はマラリアである.水田のある石垣島北部や西表島は第二次大戦直後までマラリア地帯であったので,人々は無病地に住み,有病地の田まで耕作にかよった.第二は人頭税である.八重山では1637年から1902年まで人頭税が課され,田の有無にかかわりなく米を上納させられたので,遠隔地まで水田耕作にかよわねばならなかった.このような遠距離通耕につき,主要通耕先,通耕手段,通耕の季節と期間などを明らかにし,また近年におけるその変化について検討した.
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