地理学評論
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神戸市域における都市的開発に伴う地形改変
宅地造成と海面埋立て
田中 眞吾沖村 孝田中 茂
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1983 年 56 巻 4 号 p. 262-281

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抄録

神戸市中心部の自然的背景は,1,000m近い起伏をもつ山地が直接,海にのぞみ,低平地を欠くといううらみがあった.第2次大戦後の都市発展のための低平地の確保は,このような自然的背景から,市街地の後背山地の開発と,その土砂による前面の海面の埋立てという2面において行なわれた.すなわち,その両面において大規模地形改変が進行した.
背山における大規模地形改変と土砂採取は, 1960年代より急増し,地域的には市街地に近接した六甲山地南麓から次第に西方の丘陵地・六甲山西部山頂地区を経て,より遠隔地へと移動し,開発規模も大型化した.また,これらの開発の事業主体は,主として公共企業体によっているという特色をもっている.このようにして,すでにポートアイランドを代表とする10km2の低平地が得られ,港湾・公共・工業なちびに住宅の各用途に向けられている.
これらの事業は,しばしばの大災害属歴をもつ六甲山地や,既成の大人口密集地や伝統産業地区(たとえば灘の酒造地区)などとの深いかかわりあいをもつゆえに,すでに1950年代後半の時期から,環境アセスメント的配慮がなされ,防災・環境保全・景観保全などの諸点から,土取りや土砂輸送などの具体面において,数多くのユニークな方式がとられてきた.これらは,今後の大規模地形改変に際して,種々の示唆を提示しているものと思われる.

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