宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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スピネル双晶したダイヤモンドの形態および成長累帯構造
アヒマデイジャン アブドレイム北村 雅夫
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p. 3

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抄録

はじめに:
南アフリカ産のスピネル双晶した天然ダイヤモンドの形態及び内部組織の観察を行った。三角平板状結晶の双晶境界部に分布している成長層によってできた凹入角部の形態から双晶の形態を分類した。これらの形態は二個体単結晶が互いに接触して両個体の間に出来る凹入角部と凸出部での優先成長によるものと考えられるが、本研究では凸出部効果による優先成長をはじめて考察し、形態変化による過飽和度条件の変動を推定した。
双晶の形態:
外形の観察からスピネル双晶の形態は三角平板状の成長形を示すが、凹入角の形態を四つのタイプに分類できる。(I)三つの凹入角はほとんど平らな{111}面で構成されている、(II)凹入角の二つの{111}面上にいくつかの厚成長層が広がり、双晶境界部の中心に分布する、(III)本来の凹入角部は高指数を持つ四つの面より構成されたピラミッド状となり、先端に小さい凹入角が残っている、(IV)凹入角が完全に埋められて尖っている形態となる。この凹入角の形態的な特徴によって双晶形態をA, B, C, Dの四つのグループに分けられる。これらの形態の違いを説明するには、外形だけでなく、内部組織を調べ、成長履歴を明らかにする必要がある。そこで、本研究ではグループBの結晶を、一つの凹入角部を通り、接合面に垂直に切断し、切断面を研磨しながら走査型電子顕微鏡の陰極線ルミネセンス(CL)でその累体構造を観察した。また、成長中心が見えるまで研磨と観察を繰り返し、X線分析顕微鏡で双晶境界を観察した。
累体構造:
グループBの結晶の累体構造は三つの領域に分けられる。結晶中心部に丸みを帯びた双晶の形態と、曲面及びジグザグの結晶面で囲まれた形態が認められ、溶解過程及び急速な成長が成長初期にあったと考えられる。成長中期を表す中部では、成長形は平板状となり、凹入角部での成長が早くなり、凹入角の形態はタイプIからタイプIVへ変化する。結晶周縁部は、再び凹入角部を持つ形態となり、比較的高い過飽和条件下で形成されたと考えられる。また、溶解作用を示す不整合な累体構造は中部と周縁部の間に観察された。結晶中心部と周縁部での累体構造は複雑であるため、中央部での累体構造の成長バンドの幅を測定し、成長段階における各面の法線成長速度の比を見積もった。凹入角部に接しない{111}面の法線成長速度を基準にし、凹入角部にある{111}面の法線成長速度と凸出部にある{111}面の法線成長速度を割った比を、幾何学的な考察から得られた結果と対応し、凹入角効果と凸出部効果を確かめた。また、この比から、結晶中央部での過飽和度は一旦減少し、その後上昇していること事が明らかとなった。単純に閉鎖系での成長過程からこの過飽和度の上昇したことを解釈できない。したがって、温度、圧力の著しい変化あるいは成長系での炭素の増加によって過飽和度に変化が生じたと考えられる。

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