宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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X線で水晶を見る
川崎 雅之
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p. 4

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抄録

X線の回折現象を利用して結晶中の不均質組織を観察する方法がX線トポグラフィ(X線回折顕微法)である。この方法によりセクター構造、成長縞、転位、双晶境界面等が観察できる。X線により結晶中の組織や欠陥が観察できるのは次の理由による。結晶格子が完全な場所では消衰効果により回折X線の強度が減少するが、格子が不完全な場所では回折強度は減少しない。そのため、相対的に欠陥からの回折強度が増加し、コントラストが生じる。実例として、水晶ブランク中の脈理と天然水晶(ブラジル、コリント産)について述べる。
(1)水晶ブランク中の脈理(光学的不均質像)
結晶中の欠陥が光学的な不均質像(脈理)としてしばしば観察される。用いた試料で脈理として観察された転位はコブル構造中の溝部に位置し、その像は他の転位より強いコントラストを持つ。この転位は反射方向により単独、または二本の対に見えることから、転位対と判断できる。転位対の反射強度は大きいが、その方向依存性が小さい。これは転位自身の歪みは大きいが、その異方性が小さいことを示している。また、いくつかの反射で転位の周囲に等歪勾配縞が観察された。縞の広がりの反射依存性からこの転位対の最大歪方向は転位線に直交していると見なせる。一般に人工水晶ではZ面の成長に伴い、コブル構造が発達して、転位はコブル構造の溝に集中して行く。観察された転位対は転位の集積の過程で形成されたと考えられる。
(2)ブラジル、コリント産水晶
この地域に産出する多くの水晶において、z面とm面の間にΨ面が出現する。Ψ面は起伏の多いラフな面である。結晶内部にはr、z、Ψ、mの各面が成長してできたセクター構造が見られる。また、インクルージョンからの転位の発生、セクター境界での転位の屈曲等が明瞭に観察された。Ψ面では成長末期にインクルージョンが取り込まれたが、発生した転位の一部は明らかに湾曲しており、ラフな界面で成長が進行したことを示している。

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