宝石学会(日本)講演会要旨
平成13年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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モアッサナイトに見られる中空孔の成因
砂川 一郎
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p. 7

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抄録

ダイヤモンドの類似石としてモアッサナイトの名前で炭化珪素SiCが売り出されたのは最近のことである。モアッサナイトのカット石には、中空の孔が普遍的に見られ、鑑別上の特徴の一つとされている。この種の中空孔がなぜ、モアッサナイトに見られるのかについて議論する。モアッサナイトは種結晶を使った、改良型レーリー法で合成される。これは、気相からの結晶育成法である。アチェソン法、レーリー法のいずれの合成法でも、炭化珪素の結晶が渦巻き成長機構により成長することは、古くから知られている。その発生源である転位はしばしば樹枝状結晶の樹枝の閉じこめ不整に由来し、大きなBurgers vectorをもつ。この種の転位の歪み場は大きく、転位芯に自由表面をつくらなければ歪みを解放できない。転位にともなわれる歪み場は渦巻き成長層の前進速度に影響を与え、ある臨海値以上では、前進速度の逆転が起こる。こうして、渦巻き成長層の中心部に中空の孔がうまれる。これにより、自由表面が創設され、歪みが解消されるからである。気相から成長した炭化珪素の結晶面上には、古くから渦巻き成長層の中心に凹みが観察されており、その成因がこのように理解されていた。モアッサナイトに普遍的に観察される中空孔もまったく同じ成因と考えてよい。発表では、炭化珪素(0001)面上に観察される渦巻き成長層と中心の孔に関する観察結果を紹介しながら、モアッサナイトの中空孔の成因について説明する。

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