抄録
埼玉県内で産出する鉱物種は,現在まで199種であり,ひすい輝石(ジェイダイト)も産出しているが,比較的大きな鉱物としては,方解石,スピネル,灰鉄石榴石などがある.方解石は透明な結晶が光学用として使われたという.現在では,セメントなどの材料として石灰岩(主として方解石)の採掘を,(株)ニッチツ秩父事業所(旧秩父鉱山)が採掘している.スピネルと灰鉄石榴石は,それぞれ青色と黄色の色調を示し,透明であれば宝石に十分使えそうである.これらは,堆積岩(秩父帯の石灰岩)にマグマが貫入して生成したスカルン鉱床中に見られる.現在の採掘の対象は結晶質石灰岩(大理石)であるが,かつては金,亜鉛,鉄などを目的にしていた.
一方,江戸時代には,平賀源内が“石綿”を発見して燃えない布「火浣布」として製作したことが知られている.
今回は,演者の一人である林が1999年~2001年に埼玉県教育委員会より委嘱された委員として実施した,天然記念物緊急調査の報告書を元に,宝石としての価値について報告する.なお,この調査は文化庁が全国の都道府県で実施したものであった.
今回紹介する鉱物・宝石の産地は、日本ジオッパークの一つ、秩父ジオパークとなっている。このジオパーク構想はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が始めたものである。