宝石学会(日本)講演会要旨
2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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2022年度 宝石学会(日本) オンライン講演会発表要旨
蛍光分光による、ダイヤモンドの蛍光と光学欠陥
*小川 日出丸
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p. 9

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抄録

ダイヤモンドの蛍光は、天然と合成の鑑別やグレーディングの際に活用されている。蛍光の色や発光の強弱などから、ダイヤモンドのタイプや色因等について重要な手がかりが得られる。通常、長波紫外線(365nm)短波紫外線(254nm)に対する蛍光を目視観察する方法が一般的である。

ダイヤモンドに存在する不純物や欠陥などが蛍光に関わっているが、単一だけでなく複数の欠陥が存在している場合が多いと考えられ、蛍光の見え方は多岐にわたる。異なる欠陥の存在から、青色と黄色の蛍光が並立する場合、目視では白色に見えることがあり本来の蛍光を確認することが難しい。また照射される紫外線波長に反応しない欠陥を原因とする別の蛍光は、観察することができない。

蛍光と光学欠陥の関連をみるために、蛍光分光スペクトルを測定した。蛍光分光では試料の蛍光スペクトルと励起スペクトル、それらの発光強度を三次元に表示が可能である。特定の蛍光ピークの励起スペクトルを測定すると、吸収スペクトルと一致するものが得られる。これに欠陥固有の吸収(N3 など)がみられる と、蛍光と光学欠陥の関連が確認できる。

イエロー系ダイヤモンド 3pc について蛍光分光を測定した。測定範囲として、励起波長は220nm~700nm、蛍光波長は 230nm~700nm とした。

① Fancy Light Yellow

蛍光スペクトルから、 440nm ピーク(青色)がみられた。 440nm にたいする励起スペクトルでは 415nm(N3)が確認された。

② Fancy Green Yellow

蛍光スペクトルから、 440nm(青色)と530nm(緑色)にピークがみられた。 440nm にたいする励起スペクトルに 415nm(N3)、530nm にたいする励起スペクトルには503nm(H3)が確認された。

③ Fancy Orange Yellow

蛍光スペクトルから、 540nm(黄緑色)、640nm(赤色)のピークがみられた。 540nmの励起スペクトルに 290,350,420nm band、640nm の励起スペクトルに 480nm band が確認された。

光学欠陥として①は N3、 ②は H3、 ③では480nm band が確認された。 480nm band は構造が不明とされているが 640nm の赤色蛍光に関与していて、橙色の色調に寄与していると考えられる。

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