宝石学会(日本)講演会要旨
2024年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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2024年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
奈良県香芝市穴虫産サファイアの宝石学的特徴
*三浦 真任 杰
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キーワード: Alluvial, Corundum, Sapphire, Nara, Japan
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p. 6

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抄録

コランダムは最も貴重な宝石の一つとして古来より珍重されてきた歴史がある。現在の主要な産地としてはミャンマー・スリランカ等が知られているが、日本でもコランダムが産出する。日本のコランダムの殆どは宝石品質でなく、商業的な採掘は行われていないものの、物質循環を理解する上で重要な鉱物であるために、これまで地質学的な研究がなされてきた。

奈良県二上山麓の香芝市穴虫と呼ばれる地域では戦前から川砂の中からサファイアが稀に見つかることが知られている。この地域の川砂は特徴的にガーネットを多く含み、少なくとも江戸時代からガーネットが研磨材として採取され使用されてきたとされている。その際、ガーネットに混じってサファイアが副産物として見つかっていた様である。穴虫サファイアは薄い六角板状から六角柱状の自形結晶として産し、彩度の高い青~紫色を呈している。一部変色効果を示す様なものもある。透明度もよい事から綺麗な日本のサファイアとして鉱物収集家の間で広く知られているが、結晶サイズが大きいものでも直径約 2mm と非常に小さいため、カッティングには向いていない。これまで穴虫サファイアについての地質学的な研究例はあるものの、宝石学的な観点からの研究例は限られているため、本研究では穴虫サファイアの宝石学的特徴を明らかにし、その成因について考察を行った。

赤外分光・紫外可視光分析、 LA-ICP-MSを用いた微量元素組成分析を実施した。その結果、変成岩起源を示唆するデータが得られた。先行研究によると、川砂の供給源である二上山を構成するザクロ石含有黒雲母安山岩の中からコランダムを含む変成岩の捕獲岩が発見されている(森本 1949)。穴虫産サファイアは二上山下部に存在する領家変成帯の変成岩起源であるとされていたが(福山・小笠原 2021)、メルト内包物の存在は変成岩起源とは考えにくい。類似した内包物はヨーゴサファイアから見つかっており、穴虫サファイアは似たような起源である可能性がある。

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