真の美しさと稀少さを持つ「ファンシーカラーダイヤモンド」は特殊なカラーダイヤモンドとして大変人気で、高価であるため、様々なカラーエンハンスメントと言われる処理技術によって褐色味や灰色味のあるダイヤモンドを無色に変化させたり、色の薄いものを鮮やかなピンク、パープル、グリーン、イエロー、オレンジ、ブルー、レッド、ブラックなどの色に変化させたりしています。その処理に応用される処理法として、放射線(電子線とガンマ線)照射処理、熱処理、高温高圧処理、コーティング処理などが知られています。各技法から処理されたダイヤモンドを識別するため、まず、自然界で形成された天然ダイヤモンドに生じる欠陥(光学センター)と処理によってダイヤモンドに生じた新たな欠陥の種類を明確に理解しなければ、看破に至らない可能性があり、高い鑑別技術が求められます。
本研究では、天然ダイヤモンドにしか存在しない光学センターや HPHT 処理によってダイヤモンドからどのような光学センターが消滅されるのか、またどのような光学センターが処理によって結晶内に導入されるのかを実験で検証し、測定した各光学センターの半値幅から看破の可能性を探ってみました。
褐色を帯びるタイプ II 天然ダイヤモンドをHPHT アニール処理した結果、アニール温度と処理時間によって多くの不安定な光学センターが破壊され、極一部が残留します。HPHT 処理によって天然ダイヤモンドに存在しない光学センターが導入され、看破の指標となります。また、一部の光学センターは天然ダイヤモンドにしか存在しないため、処理によって形成されないことが分かりました。
照射線処理によってファンシーカラーイエローとグリーンダイヤモンドに形成される光学センター(H1a, H1b, H1c, 595nm, H2, H3, H4, GR1)の吸収と発光特徴を調べ、人為的な照射処理となりえる指標をフォトルミネセンスの発光分光から検討してみました。 宝飾用に供される合成ダイヤモンドのサイズ、品質は年々向上しており、様々なファンシーカラーも存在している。同じく、現在、メレサイズの合成ファンシーカラーダイヤモンドも多く流通している。メレサイズのファンシーカラー合成ダイヤモンドは、ジュエリーにセッティングに混入する可能性があり、注視する必要がある。
新技法によりコーティングされた超薄層を持つカラーダイヤモンドは拡大顕微鏡では、その表層が観察しにくく、酸を用いて20分以上に熱しないと、通常な超音波洗浄ではそのコーティング層はなかなか剝がれない特徴があります。分光分析からコーティング層由来のスペクトルを検証してみました。
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