宝石学会(日本)講演会要旨
2024年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
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2024年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
エメラルドの原産地鑑別における問題点
*趙 政皓北脇 裕士江森 健太郎
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p. 8

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抄録

エメラルドはベリル(Be3Al2Si6O18)の一種であり、 Cr3+や V3+が Al3+を置換して緑色を呈する。古くから貴重な宝石として認識され、 16 世紀以来コロンビアの高品質のエメラルドが最も高く評価されている。近年では、世界各地から高品質のエメラルドが産出されるようになり、エメラルドの原産地鑑別の重要性が急速に高まっている。 エメラルドの原産地鑑別についてはこれまで多くの先行研究があるが、ここでは CGL で採用している原産地鑑別の手法と新たに明らかになった問題点について紹介する。 現在、 CGL ではコロンビア、ザンビア、ブラジルなど主要な 10 ヶ国の産地のエメラルド合計 284 石のデータが参照データベースとして記録されている。本研究で用いた手法は、主に顕微鏡観察、屈折率測定、赤外スペクトル、紫外可視スペクトル、 LA-ICP-MS である。

国内での流通量が最も多いコロンビア産エメラルドは、他の産地と比べ特殊な環境で形成されるため、いくつか際立った特徴がある:例えば、三相包有物がよく観察される;赤外スペクトルに特徴的な 5447 cm-1 付近の吸収がある;紫外可視スペクトルに 830 nm 中心の吸収がほぼない。しかし、これらの特徴は他の産地からの石にもしばしば観察できるようになった:アフガニスタン産エメラルドからも三相包有物を観察できる; Na が少ないタイプのロシア産エメラルドも 5447 cm-1 付近の赤外吸収がある。さらに、図 1 に示すように、 830 nm 中心の吸収が明らかなコロンビア産エメラルドも存在し、コロンビアと他一部の産地のエメラルドが区別しにくいという現状がある。この場合、 LA-ICP-MS による微量元素の測定が鑑別の重要な手がかりとなる。

また、採掘が長期間続いている地域でも過去と現在が採掘するものが異なることもある。例えば、今流通しているブラジル産エメラルドは主にミナス・ジェライス州産であるが、過去日本に流通したのはバイーア州産のものが多かった。しかし、近年バイーア州で採掘されたというエメラルドは、過去のものと違って高濃度の Fe と Cs が含有され、ザンビア産と間違う可能性が高いものであった。調査の結果、両者は線形判別分析で分別することができることがわかった。このように、エメラルドの新しい産地が発見されるだけでなく、流通したものと同じ地域からの石が過去のものと異なる特徴を有することもあり、エメラルドの産地鑑別はいつか宝石学者にとって大きな挑戦になるかもしれない。そのため、エメラルドの特徴を注意しつつ、データベースを常に更新することが極めて重要である。

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