宝石学会(日本)講演会要旨
2024年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
会議情報

2024年度 宝石学会(日本) 一般講演要旨
栃木県那珂川町から産する高温石英と長石
*福田 千紘河野 重範江島 輝美
著者情報
キーワード: β-quartz, Sanidine, Plagioclase
会議録・要旨集 フリー

p. 9

詳細
抄録

石英は高温相(β)と低温相(α)が知られており高温相の物は高温石英と呼ばれているが結晶形態を留めていても低温相の石英になっているものが殆どである。栃木県那珂川町和見には中新統荒川層群小塙層が分布している。

我々の研究グループは、和見の小塙層上部付近(約 12 Ma)において高温石英が特異的に濃集する層準を発見した。今回は、現地踏査と露頭から採取された堆積物試料から分離した高温石英および長石の結晶の特徴および形態について報告を行う。

高温石英を多産する露頭は、高さ 8 m前後で地層は 3-4°西傾斜、岩種は淘汰の悪い凝灰質砂岩である。部分的に泥岩およびパミスタフの単層を挟み、堆積構造は一方向の流れで形成されるトラフ型斜交層理、および生物擾乱が観察される。また、タコアシカイメンの骨格化石も散在的に産出する。高温石英および長石は本露頭においてすべての層準で含有が認められる。

和見産の高温石英は、特定粒度ではなく細かい粒子から荒い粒子まで様々な粒径のものが含まれる。自形の結晶が優勢で、柱面が殆ど見られないソロバン玉のような形状の結晶が多い。透明度が高くクラックが少ない上、殆ど表面の摩耗が見られないため、降下堆積後はあまり移動していないものと考えられる。色調は淡ピンク~褐ピンクであり、色因は加熱実験を行った結果、 500℃1 時間の加熱で退色したため煙水晶と同様の自然放射線起源のものと考えられる。内部には無色から褐色の高温石英自形結晶と同型のネガティブクリスタルが含まれ、気泡を含む二相 inc を成している。粉末 XRD 分析の結果、相転移しており低温石英に変化している。また、薄片を作成する際薄くなると必ずひび割れて光学歪が観測された。これは相転移時の体積収縮に伴う歪の影響と考えられる。 FTIR による分析では、 Li に関係するとされる 3000cm -1 台の多くの水晶にみられる吸収が出現しない。これは Li に乏しい環境で生成されたことを示し、ペグマタイト環境とは異なることを示唆する。さらに、既知の高温石英産地である宮城県仙台市青葉区郷六産と茨城県日立市会瀬産の試料との比較も行った。

和見産の長石にはアルカリ長石と斜長石の両方が含まれる。アルカリ長石は多くが劈開片として産し完全に無色透明である。一部にカルルスバッド双晶の模範的な結晶も見られた。クロスニコル下では極微細なパーサイト組織が認められる。平均組成は Or74 程度で、粉末 XRD 分析の結果単斜晶系でありサニディンであった。斜長石は殆どが自形結晶で各種双晶が形態から判別できるものが多く、無色から淡黄色、一部にイリデッセンスを呈するものがある。クロスニコル下では典型的な累帯構造を呈し火山岩起源の斜長石と類似した特徴を持つ。平均組成を測定した結果は An43であった。

著者関連情報
© 2024 宝石学会(日本)
前の記事 次の記事
feedback
Top